A:真紅の警告者 ソム
大草原の生物は、大きくふたつにわけられる。草や岩場の色に溶け込む体色を持つ者、そして、逆に派手な色を持つ者……。
前者は、捕食者に見つからないためだってのは、狩人でなくても、すぐに思い当たるだろう。ならば、後者の理由は……?
血のように赤い大蜥蜴、「ソム」と出会えば、どんな愚者でも、理由を思い知るだろう。
②近づくなという「警告色」だということがさ……。
~クラン・セントリオの手配書より
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ショートショートエオルゼア冒険譚
自然界でよく見られることだが、弱い生物ほど草や岩場の色に溶け込む所謂保護色の体色をしているものだ。何故なら弱いから。捕食者が見分けがつかないような周囲に溶け込むような体色をしている。
それとは逆に強い者は派手に目立つ色、しかも毒々しい色を纏っていることが多い。所謂警告色だ。派手で目立つ色の恰好をして自分は危険な生物であることをアピールして身を護る。
このアジムステップのオオサンショウウオの場合は何だろう?
巨大なサンショウウオの体色は夕焼けの真っ赤な空に黒い雲が射したかのような鮮やかで派手派手しい色をしていて、しかもサイズが規格外にでかい。風を覚え飛べるようになった二人乗りチョコボで移動する上空からでもその存在感は絶大だった。
色以外に特筆すべき特徴としては、三角になった頭部だ。細長い体と相まって、空からは地面に書いた赤い矢印のように見える。あたし達はその矢印から少し離れた所にチョコボを下ろすとゆっくり戦闘の準備を始めた。
いざ戦闘が始まった。相方が引き付け、あたしが魔法を叩き込む。順調に戦っていたはずだった。
オオサンショウウオが何かを仕掛けようと見慣れない仕草で身構えた、チャンス!長い詠唱を伴う黒魔法に避けようのない全体攻撃が入ると、そこまでははっきり覚えていた。
その後あたしが覚えているのはこの真っ赤なオオサンショウウオの目が光ったこと。次に気が付いた時あたしの体は元サイズの1/4くらいの大きさになっていた。
「なんなのよ、これぇ!」
あたしがジャストサイズで着ていたはずの服の塊から顔だけ出して、訳が分からずあたしは叫んだ。
「避けてぇ!」
相方の声が聞こえてあたしは素っ裸の状態でがむしゃらに適当な方向へおもいっきり飛んだ。すると今まであたしが立っていた場所の地面がパアンと音を立てて弾ける。横っ飛びに飛び出したあたしが地面で2,3回転して体勢を整えた瞬間にオオサンショウウオが食いついてくる。
「ひいいいいいっ」
あたしは必死になってパクン、パクンと2回、3回食いついてくるサンショウウオを這う這うの体で躱すと、手で色んなところを隠しながら尻もちを付いたまま後ずさった。
「なに?なに?みんなでかいんだけど!」
皆がでかいのではない。あたしがちっさいのだ。
再びサンショウウオがあたしを摘み食いしようと飛び掛かって来た。
「あんた、そんなにでっかいんだからこんなちっさいの食べたってお腹膨れないでしょ!」
あたしは変な理屈を大声でこねながらオオサンショウウオに訴えた。尻もちを付いた状態から立ち上がって逃げるには時間が足りない。
間に合わない!駄目だっ!あたしは強く目を瞑った。
「痛いのやだ!まるのみにしてっ!」
目を瞑ったまま覚悟を決めた瞬間体がフワッと持ち上がった。相方がギリギリのところで小さくなったあたしを掻っ攫い、小脇に抱えたまま走り抜けた。
「無事⁉」
相方が短く聞く。
「死んだとおもったぁ、ありがとおお」
あたしは半ベソをかいて相方にしがみ付いた。
「あいつが構えたら目を見ちゃダメ!操られるみたい」
相方はたまたま目を逸らしていたらしい。あたしを地面に卸すとオオサンショウウオの方に向き直りながら相方が言った。
どうやら催眠で相手を操り、魔力のある毒液で小さくして一呑みにするのがこいつのパターンらしい。
「こんの、変態蜥蜴が!」
あたしはオオサンショウウオの方を向いて素っ裸のまま仁王立ちになって言った。
「いいから体が戻ったら服着て!丸見えで集中できない」
相方がちょっと困惑した顔で言った。